2016年2月3日水曜日

2016シクロクロス世界選手権:レースレポート


大会名:            UCI 2016シクロクロス世界選手権大会
開催日:   2016131
開催場所:  ベルギー・Heusden-Zolder
カテゴリー: U23
リザルト:        34
天 候:   小雨
コースコンディション: ウェット

いよいよシクロクロス世界選手権の日を迎えた。
全日本を終えてからは照準を世界戦に備えて、ここまで準備を行なってきた。
日本にいる時から体調は良く、モチベーションが高い状態を常にキープできている。
世界戦での10番台という目標は非常に高い設定ではあるが、達成できる自信はあった。前週のワールドカップのようにスタートから良い位置で展開できれば、順位をキープすることは可能なはず。時差ぼけも取れて、今回は脚への刺激もしっかりと入っているため、万全の調子で世界戦を戦えることが嬉しい。

ゾルダーのコースはF1のサーキットと林区間を利用した高速コースで、ロードレースのように大人数での集団となってレースが展開されていくことが多い。シクロクロスでは高速コースになるほどトップとのタイム差は開きにくいが、同時に順位を上げていくことも難しくなる。ゾルダーのコースは後半の林区間が登り下り共に斜度があってテクニカルであるのだが、ここでミスを犯して集団から離れると、その後の長いアスファルトのサーキットを単独で追いかけることになって非常にキツイ展開となってしまう。前半のハイスピードセクションは無理をせずに集団で我慢し、後半のテクニカルセクションで順位を上げていくのが最も賢い戦い方だと試走を通して感じた。

金曜の夜から土曜にかけて雨が降り続いたことでコースは泥区間が増え、どのセクションも油断ができない状況。特に立体交差の前後やコーナーの立ち上がりは轍が深くなっている箇所が多く、レース直前の試走時間でも世界のトップ選手たちのライン取りを観察しながら、ベストなライン取りを学んでいった。シクロクロスという競技は自分より上のレベルの選手たちから学ぶことが非常に多く、ライン取りを真似するだけで驚くほどスムースに走れるようになることが多い。MTBのように世界のトップ選手だけが通れるような特別なラインというのはそれほど存在しないのだが、レース中にミスなく正確に最速ラインをトレースする能力に関しては、シクロクロスのトップ選手たちはずば抜けて高いように感じる。

レース前日は土砂降りの雨であったが、当日は曇り空に少し小雨がぱらつく程度に回復した。泥の影響で乗車できない区間は増えたが、それ以外は高速コースであることは変わらないためドライタイヤを選択。空気圧は全日本の時と同じ1.6barに合わせた。

ワールドカップと同じ3列目からのスタート。おそらくゾルダーは世界で最もスタートダッシュのスピードが速いコースだ。アスファルトの直線はとても長く、軽めのギヤではあっという間に脚が回り切ってしまうため、スタート専用バイクとして48Tなどの大きなギヤを入れている選手もいるほど。ダート区間に入るまでに20位以内のポジションにつければ、目標達成の可能性はぐっと近づく。当然スタートは今シーズン一番とも言えるほどに集中していた。しかし結果として僕は一番重要な場面であるスタートダッシュに失敗し、20人余りの選手に後ろから抜かれてしまう形でレースは始まった。この原因は分かっているので、レポートの後半に記したいと思う。

ダート区間に入る最初のコーナーは非常に滑りやすいため、どのカテゴリーでも必ず落車が発生する。自分は早めにバイクを降りていたので、このコーナーは上手く切り抜ける。数人は抜けたと思う。だが目の前にはたくさんの数の選手が見える。明らかに自分が目標としている位置に今の自分はいない。焦る暇もなく、ひたすら全力でペダルを踏む。目の前には落車で遅れたベルギー、オランダといった強豪選手も見えるが、明らかに彼らの方が自分より焦っていて、ミスも多い。しかし圧倒的なパワーと自分には真似のできないラインを使って強引に前に上がっていく。僕には彼らほどのパワーとテクニックがなかったからこそ、スタートで出遅れることは絶対に許されなかったのだ。だがレース中に起きるミスはすぐに忘れて、とにかく前向きな気持ちでレースを進めていくしかない。身体は良く動くので、気持ちは全く切れていない。しかし数人は抜けても大きく順位を上げることはできずに、30番台後半の順位で1周目を通過。

トップとのタイム差は大きくはなく、完走することは問題ない。というより、そんなことを目標にここに来ているのではない。一つでも前へ。正直この位置からの10番台は厳しいと思ったが、20番台に入るチャンスは十分にあった。順位が35位ほどになったところで、目の前に3人ほどのパックが見えてくる。しかし絶対に追いつきたいという想いと焦りから目の前のセクションへの集中力が途切れ、ミスを犯して5秒ほどタイムロス。試走では一度も失敗していないセクションなのに、レースというのは本当に難しい。会場にいる日本人の方、そしてベルギーの観客達までもが自分を「Toki!!」と名前で応援してくれる。もっと速く走りたいと心から奮い立つような応援を送ってくれる。

ラスト2周からは単独での展開が多くなってくる。前に見える数人の選手に追いつけそうで追いつけない。調子は良いのに競り合えないことがもどかしい。後半は順位を上げることはできずに34位でのゴールとなった。

終わってしまったというのが率直な感想。トップとのタイム差は4分ちょっと。高速コースだということを考えると決して僅かな差だとは思わないが、前週のワールドカップでは7分近いタイム差があったことを考えると、やはり調子は悪くなかったのだと思う。それだけに本当にスタートが悔やまれる。あそこでもっと前のパックでレースを展開できていれば。。
あまりにも悔しいので、自分なりにスタートが上手くいかなかった理由を考えた。
あの時の感覚としては、脚が動かなかったというよりは、位置取りに失敗して動けなかったという方が近い。自分は真ん中辺りに並んでいたのだが、一番右端に並んでおけば良かったと思う。あるいはスタートしてすぐに集団の端に動くべきだった。目の前の選手についていくことしか考えていなかったため、横から追い上げてくる選手に道を塞がれて全く動くことができず、全力で踏むことができていなかった。一方でオランダでのワールドカップでスタートが上手くいった理由は、スタート直後が登り坂であった上にゾルダーに比べて直線の距離が短く、後ろからスタートした選手はトップスピードが伸び辛かったのだと思う。そのため3列目の好位置をキープしてダート区間に入ることができた。

もちろんスタートに失敗した理由、中盤にもっと順位を上げられなかった理由は他にもある。例えばバイクペーサーで自分のトップスピードを高めておく練習は、ヨーロッパのシクロクロスを走るのであれば必ずやっておかなければならないと感じた。なぜなら他の選手たちは皆やっているからだ。日本でもできる練習をやらなかったことは、自分のミスである。
他にも課題、反省をあげればキリがない。

これで今シーズンのシクロクロスは全て終了すると共に、U23クラスを卒業することとなった。
来シーズンからは日本でも世界の舞台でもエリートクラスで走ることとなります。
再び世界選手権に挑戦したいと簡単には言えませんが、今年12月の全日本選手権で日本一になることができたら、その時は再びこの舞台を走りたいです。
僕は日本で一番の選手になりたいし、それは小学生の頃からの目標です。
来シーズンはそれを達成する時です。

そして3週間後にはMTBシーズンも始まります。
この冬のシクロクロスは僕にとって凄く良い刺激を与えてくれたし、そのことを証明するためにもMTBを全力で頑張ります。
これからもどうぞ宜しくお願い致します!

BRIDGESTONE ANCHOR CYCLING TEAM
沢田 時



使用機材
バイク       ANCHOR CX6http://www.anchor-bikes.com

コンポーネンツ   SHIMANO DURA-ACE Di2 9070シリーズ (http://www.shimano.co.jp
シューズ         SHIMANO  SH-XC90

ヘルメット                Kabuto ゼナード スペシャル・チームカラー
グローブ     Kabuto  PRG-3(レッド)
                                    (https://www.ogkkabuto.co.jp)

ソックス        Wave One (http://www.wave-one.com
         
サングラス              OAKLEY (http://jp.oakley.com
         JawbreakerPRIZM TRAIL
        
サプリメント     SAVAS(株式会社明治)(http://www.meiji.co.jp/sports/savas/
          レース前:ピットインエネルギージェル
                栄養ドリンク風味(カフェイン入り)
                                 SAVASスポーツウォーター 
          レース後:リカバリーメーカーゼリー

ヘッドバンド   HALO (https://www.haloheadband.jp
         グラフィック プルオーバータイプ(チームヘイロ)